平成26年暮れに逝去した女流作家,宮尾登美子(以下,登美子と略)について書かれた初の本格的評伝。
綿密な調査に基づいて執筆された本書は大変素晴らしく仕上がっており,登美子ファンなら購入して間違いなしの一冊。
登美子の人生についてはファンなら皆知りたいところだろう。なぜなら彼女の人生≒彼女の作品の核だからである。
その生涯については,生前,自身がエッセイやインタビューで語っていた他,2年前の死去時にはいくつかのメディアがあらためて報じた。
しかし残念なことに,それらはいずれも昭和30~40年にかけての詳細に乏しく,一農家の嫁でしかなかった登美子が,如何にして農業から離れ,故郷高知を後にし,上京せざるをえなかったのかが今一つ釈然としない点で共通していた。本書はこの点をおおむね解明している。
特に,昭和33年頃には春野町の婚家を前夫・子供共々出ていたこと。その数年後には姑もこの家を離れていたことを初めて知ることができた。
また,前夫と離別し宮尾の姓を名乗るようになってから,散在したり複数の商売(衣料品販売!)に手を染めていたことも明らかにされる。
更にはなんと,一時期は社会党に入党していたことなど,驚くべき新事実が描かれている。
私の涙を誘ったところとしては,夜逃げ前夜,飼い犬クロを連れ出して捨てに行くところ。そのシーンを想像するとあまりに辛く切ない。
この一冊を読むことで,私の中でもやもやとし続けていた,本格デビュー以前の登美子の姿を一段を鮮明にイメージできるようになった。
直木賞はじめ数々の賞に輝いた登美子については,これから先も研究が行われることが予測される。
本書はその端緒となる一冊であろう。
十分に満足できる本であることは間違いないが,今回あえて★4つの評価に留めさせていただきたい。
その理由は,著者である大島氏にはこの一冊で登美子研究を終えることなく,ぜひ続編を執筆していただきたいからである。
敏腕ジャーナリストの大島氏であれば,本書作成の過程において相当綿密な調査をされたと想像する。そして同時に,この本に現れた種々の逸話は,それら収穫物のほんの一部に過ぎないであろうことも。
登美子の関係者については,プライバシーの都合で書きにくい事も多いと思うが,可能な範囲で構わないので,いろいろと知りたいと思うのである。
例えば,前夫,前田氏のその後と,再婚相手である雅夫氏の上京後の人生についてである。
言ってみればこの2人は,圧倒的なエネルギーを放つ登美子という女性に翻弄されたところがある。
共に登美子に惹かれ,登美子を愛し,そして登美子に振り回された2人の男の人生を対比させて描かれた作品を読んでみたいと思うのは,酷な要求だろうか?
いずれにせよ,登美子ファン必見の評伝であり,自信を持ってお勧めする一冊である。
・・・しかし,林真理子氏は登美子の評伝を書かないのかなあ。。。
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宮尾登美子 遅咲きの人生 単行本(ソフトカバー) – 2016/10/17
大島 信三
(著)
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『鬼龍院花子の生涯』『陽暉楼』『櫂』『寒椿』などで一世を風靡した直木賞作家の波乱の生涯を描いた本格的評伝。
二回のロングインタビューを中心に、本人の日記、手記などを徹底取材。魅力的な人間像が浮かび上がってくる。彼女がまるごと生きた「昭和」の時代を、さまざまなエピソードを交えて描く。
二回のロングインタビューを中心に、本人の日記、手記などを徹底取材。魅力的な人間像が浮かび上がってくる。彼女がまるごと生きた「昭和」の時代を、さまざまなエピソードを交えて描く。
- 本の長さ288ページ
- 言語日本語
- 出版社芙蓉書房出版
- 発売日2016/10/17
- ISBN-104829506911
- ISBN-13978-4829506912
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商品の説明
著者について
昭和17年、新潟県生まれ。早稲田大学教育学部卒。同39年、産経新聞社に入社。千葉支局を振り出しに新聞と雑誌の両部門で政治や経済、国際問題、文化全般の取材に携わった。その間、多数の各界著名人とロングインタビューをおこない、文壇関係では本書で紹介の宮尾登美子のほか井上靖、司馬遼太郎、江藤淳、辻邦生、城山三郎、石原慎太郎、五木寛之らに話を聞いた。『週刊サンケイ』編集長、『新しい住まいの設計』編集長、特集部編集委員、『正論』編集長、編集局編集委員、特別記者を経て平成21年退社し、現在はフリーのジャーナリスト。著書に『異形国家をつくった男――キム・イルソンの生涯と負の遺産』(芙蓉書房出版)がある。日本記者クラブ会員。
登録情報
- 出版社 : 芙蓉書房出版 (2016/10/17)
- 発売日 : 2016/10/17
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 288ページ
- ISBN-10 : 4829506911
- ISBN-13 : 978-4829506912
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